Opinion : とことんほっとけないホワイトバンド (2005/11/14)
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まだ、この件に粘着している (苦笑)
一言でいいきってしまうと、最大の問題点はキャンペーンそのものの不誠実さにある
資金集めが目的なら、そのことを明示して「貧困解決のために私達はこういう活動をやりたい。つきましては、資金集めのためにホワイトバンドを買って協力してね」というスタンスにすれば、こんなに叩かれることもなかっただろう。活動内容の是非は、また別の問題として存在するのだけれども。
ところが実際にやったことといえば、資金集めという本質を隠して「募金されそうな雰囲気」を演出したり ("活動経費" という言葉が典型例。こんなことを書けば誰だって勘違いする)、有名人を大々的に使って「セレブ」とかいう言葉を使ってファッショナブルな演出なんかやったりしている。資金集めという実態が後出しでバレたものだから、これで叩かれない方がどうかしている。
さらに、「寄付/募金はしないのか ?」という批判が出たら、売上全体から見たら屁みたいな額でしかない資金拠出を発表して逃げ切ろうとした。しかしこれ、寄付/募金の方針に転じたのかと思わせておいて、実は違うようだ。拠出先は「基金」、つまり NGO/NPO の活動資金をプールする存在であるらしい (参考)。
ただこれ、パッと見には寄付/募金をやったのだと思わせるところが嫌らしい。それを麗々しく発表するあたり、やはり批判逃れのための行動といわれても仕方あるまい。妙なところにばかり知恵が働くものだ。
これが寄付/募金だったら、プロジェクト関係者が初志貫徹という言葉を知らないということになるのだが、実は初志貫徹している。あくまで、カネを出す先は NGO/NPO であるという点においてだが。
ホワイトバンドの販売で得られた億単位の利益については、「有識者委員会の検討により、しかるべき研究機関や NGO/NPO に渡す」ということになっているそうだ。もっとも、この「有識者委員会」がどういうメンツで、どういう基準で資金を渡す先を判断するかが明らかにされていない以上、はいそうですか、と納得するのは難しい。
それに、流通経費を支払った卸/小売業者、ホワイトバンドの製造を依頼した業者やデザイン担当、すでにに資金を出した先の組織がどこで、その使途はどういう内容か、これから制作するとかいう TV 番組の制作者や内容はどうなるのか。こういった情報や固有名詞が、ほとんど公にされていないという不透明ぶりも無視できない。
公式 blog では "大切なお金を預かった" と称しているし、公式 Web サイトでも「高い透明性を確保していきます」と宣言しているのだから、使途を詳細に公表するのを忌避する理由はあるまいに。それとも何か、公表するとまずい事情でもあるのか。はたまた、キャンペーン事務局がいう「透明性」には自動煙幕発生装置が付いているのか。ここは 1942 年のブレスト軍港ではないぞ。
おまけに、Web サイトでは「今後はホワイトバンドの販売が落ち着いた然るべきタイミングで、会計情報の開示をきちんと行う予定です。」なんて書いている。まかり間違ってブームが続いてしまい、販売が落ち着かなければ開示しないというのか。これは、公表を求められたときに「まだ然るべきタイミングではない」といって逃げるための伏線か ? 「四半期ごと」などと明示するのでは何か都合が悪いのか ?
ただ、「実は寄付ではないんだって ?」という点を突いた側も論点がずれている。本来、もっとも非難の対象になるべきは以下の三点ではないだろうか。
「寄付ではなく資金集めである」という本質を隠蔽した点 (少なくとも、積極的なアピールはしていなかった)。これは前回の記事に書いたとおり
「意思表示」というキャンペーン本来の趣旨を歪めて、純正品ホワイトバンドを買わせようと誘導した点 (これも同様)
こうしたやり方の結果として、他の物販系チャリティや募金活動にもトバッチリを及ぼしてしまったこと
最近でこそ「自作品も大歓迎」などと殊勝なことをいっているキャンペーン事務局だが、本音の部分では純正品だけを買わせたいと考えているのは、「ほっとけない」と「hottokenai」の商標登録をやっている点、そして自作品には「* * *」をつけないでくれといっている点から明らかだろう (参考)。
商標登録に関する記載は、「キャンペーン・ガイドライン」の PDF 文書に記されており、区分は第 14 類 (貴金属、貴金属製品、宝飾品及び時計)・第 16 類 (紙、紙製品及び事務用品)・第 25 類 (被服及び履物)・第 35 類 (広告、事業の管理又は運営及び事務処理) となっている。
ちなみに、このガイドラインのファイル、なぜか現在は公開されていないようだ。例によって、後から何か不都合が発覚したのだろうか ?
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本来の意図、つまり「白いモノを巻いて意思表示」を推奨するのであれば、商標登録によって他者の参入を阻止する必要はないし、ニセモノの存在を目の敵にする必然性もない。なにしろ、自作品大歓迎なら、最初から本物もニセモノもないのだから。極端な話、ビバンダムの着ぐるみを着ればよろしい。ところが実態はかくのごとし。衣の下から鎧がチラチラと見えている。
その純正品ホワイトバンドにしても、中国の工場に妙な高値で発注することを「フェアトレード」と称するのは、フェアトレードの考え方を愚弄していないか。しかも、中国で生産されている点を批判された途端に、今度は「中国も豊かになってきたので、拠点をマレーシアに移して云々」ときた。もう笑うしかない。
この半年かそこらの間に、突如として中国経済がとてつもなく成長したのだろうか ? しかも、この文脈では、ホワイトバンドの製造を発注したおかげで中国が豊かになったみたいじゃないか。国連ワールド・サミットの一件といい、この件といい、言い訳が杜撰かつ自画自賛すぎて、開いた口がふさがらない。
批判されると態度をコロコロ変えるのは、このキャンペーンのお約束。また、その際の説明が言語不明瞭・意味不明瞭で、真実が巧妙に隠されているのもお約束。
今回、「世界エイズ・マラリア・結核対策基金」への資金提供を唐突に発表しているが、Web サイトについても、11/8 の改訂後に、いきなり HIV 問題などへの言及を大々的に始めている。これらは、例の資金拠出との整合性、それと「外国のキャンペーンではエイズ問題にも取り組んでいるのに」という批判に対する火消しと考えられる。
しかし、過去からずっと Web サイトの内容を追っていれば、「以前から感染症の問題を重視していた」という説明が怪しいのは明瞭に分かる。
なにしろ、11/8 に公式サイトを改訂する以前は、感染症という言葉が出てくるのは「FAQ」の項で数ヶ所だけ。「Message」の項にあった「どうすればいいの ?」で掲げていたキャンペーンのゴールは、例の「援助の方法見直し」「借金帳消し」「貿易の仕組みを変える」の三点しかなく、感染症の文字は 1 バイトたりとも出てこない。それを今頃になって「感染症のことも以前から重視していた」とは笑止千万。
まさに、批判される度に火消し目的で言い訳を小出しにする、ガダルカナルにおける日本陸軍状態。戦力、もとい、言い訳の逐次投入ぶりや、批判に対する場当たり的な対応しかできない点が、一貫性のなさや、論拠の薄弱ぶりを示している。もっとも、純正品ホワイトバンドを売りたいという点と、貧困で困っている人に直接の資金提供をしないという点では一貫しており、かつ意志強固みたいだが :-p
もうひとつ噴飯モノなのが、Yahoo! blog に開設されている公式 blog で出現した、珍無類な言い訳だろう。例の公開 Q&A・第三弾。ここに、例の使途明細 PDF 書き換えに関して説明した、こんな記述がある。
■改訂前の記述
「ホワイトバンドの売上金のうち、「原価および政策経費」と「流通費」を引いた「世界の貧困をなくすための活動費」
(1) 貧困克服・ホワイトバンドプロジェクト啓発広報活動費 : 20%
(2) 貧困問題の解決に資する政策変更のための活動 : 10%
■改訂後の記述
これを、統一して
世界の貧困をなくすための活動費 : 30% (200 万本を超える分については 44%)
■その理由
なぜ「30%」と統一した表現に改訂したかと申しますと、改訂前の記述では、「(1) も『世界の貧困をなくすための活動費』である」と、上手く伝わっていないことに気がついたのです。
「貧困克服・ホワイトバンドプロジェクト啓発行動活動費」と書いたのでは、「世界の貧困をなくすための活動費」だと受け取ってもらえないと思ったそうだ。はあ ?
この言い訳を真に受けるならば、これを書いた人は日本語の読解力が欠如しているといわざるを得ない。普通、この文面なら「貧困をなくすための活動費」だと思うだろう (それが具体的に何なのかはともかく)。それともこれは、ホワイトバンドプロジェクトの啓発広報活動なるものが、貧困問題の解決とは別のことを対象としているのだと認めた、という意味だろうか ?
この明細修正に関しては、変更前よりも却って内容や使途が不明瞭になっているとの指摘がされている。その疑問に対する回答なのだとしたら、これは落第点しかつけられない説明だ。
その一方で、どういう訳かこのキャンペーンの関係者、「貧困をなくすための活動経費」「これまでの募金活動とはちょっと違います」に代表されるような、巧妙に錯誤を誘う文章を書くのは上手いのだ。面白い。
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それもさることながら、2 ヶ月以上経過してから「上手く伝わっていないことに気付いた」という能天気な説明からして、お話になっていない。政治家が失言を叩かれたときの記者会見で「いや、実は私の意図が正しく伝わっていなかったのだ」と釈明するのと似たようなものじゃないか。
そんなもん、ちゃんと事前に文章をレビューして、意図したとおりに伝わるかどうか検討していない時点でアウトだろう。ましてや、サニーサイドアップは PR が本業。そんなことも分かっていないとは考えにくい。
よしんば、この言い訳が真実だとしても、自分が意図したとおりのことを最初から正しく伝えられるかどうかすら怪しいことになる。そんな人達に、他の人間にメッセージを伝えて心を動かすための「啓発活動」「啓蒙活動」なんて、果たしてできるものだろうか ?
しかも、後になって「上手く伝わっていないことに気がついた」なんて泣き言をいって、こっそりと書き換えているのが実情。これでは、啓発活動とやらの中身についても、後から「意味が正しく伝わらないのではないかと気付きました」といって、ひっそりと違う内容に差し替えかねない。
この公式 blog では、もうひとつの赤ゲットをやっている。それがこれ。証拠保全のために掲載しておく。(▼読み飛ばして次の内容へ)
ここのところ、少し難しい話題がつづいてしまいました。
なので今日はちょっと目線を変えて、分かりやすいたとえ話をしてみましょう。
おなかをすかせた人がいます。
魚をあげたら、きょうはおなかが満たされる。
でも明日になったらどうするの ?
またお腹がすいてしまいます。
それよりも、釣竿を渡して魚を釣ることを教えたらどうだろう。
自分ひとりでも、 継続的に魚を食べることができますよね。
小麦粉をあげる。
作り方を教える。
パン工場をたてる。
そして作ったパンを売る。
そのお金でまた小麦粉を買う。
つまり、ずっと続けていけるシステムをつくることは、100 個のパンをあげるよりもずっと効果的で、発展性があるんです。
このシステムはしくみであり、構造であり、それを作り出すのが政策です。
だから私たちはなくなってしまうものを届けるよりも、継続的にものが作り出されるシステムづくりを目指すことをしているのです。
お魚をあげることももちろん必要です。
でも、その一方で誰かが釣り竿を届けるためにがんばることもどうしても必要なのです。
今、日本には貧しいこどもたちの写真を見て、「釣り竿をあげなきゃ !」
と思う人はまだ少ないです。
自分達がそっちの立場だったら、お魚もほしいけど、きっと釣り竿もあったらなあ、と思うはずなのに。
貧困の現場が余りにも遠すぎて、情報が少なすぎて、日常では考えつきそうなことをあてはめることが難しいのかもしれません。
貧困などの地球規模の問題が、自分たちの生活に直結している。
それにまず気づいてもらうこと(開発教育、と言います。)が、今の日本に一番必要なことだと思います。
これもまた、「チェック不足だった」という理由でこっそりと、公式 blog から削除されてしまった記述。自分たちは現地にカネを落とさず、全部政府におっかぶせようとしている人がいう台詞か、等の突っ込みはさておき、仮にも公式 blog のオフィシャル見解だ。ライブする前にきちんとレビューするのが筋だろうに。そもそもサニーサイドアップの本業は (以下略)
総括すると。
自社の資金を投入して作った工場で作られるホワイトバンドを売り、さらに自社所属のタレントのイメージアップを図りたいサニーサイドアップ。それと、資金集めと存在のアピール、そして自分たちの主張に合った政策のごり押しを図りたい NGO/NPO の利害が一致して仕組まれたキャンペーンというべきではなかろうか。
例の週刊文春の対談では、「資金繰りも大変なんです」なんていっていた次原社長だが、蓋を開けてみたら 9 月末日の時点で残金 3 億円ときたものだ。当該記事が出たのは 10 月初頭だから、対談があったのは 9 月末のはず。すでに収支状況は見えていたハズだが、この発言。
どんな活動にでも経費がかかるのだから、すべてを無償行為で賄えとはいわない。しかし、そのことを正直にいわず、さも募金活動であるかのように装った商売をしている点は責められて当然。冒頭でも書いたが、これこそが最大の問題点といえる。(追記 : しかも、ホワイトバンドは販売店の買取制であり、返品はできない仕組みになっている。だから、卸した側は損をしないし、販売店は不良在庫にしたくなければ、とにかく何としてでも売るしかないのだ)
そういう、キャンペーンの偽善便乗商売体質を如実に象徴しているのが、ホテル・インターコンチネンタル東京ベイの "10 周年記念・ホワイトバンドをつけよう" (Web サイトのキャプチャ、232KB) ではないだろうか。まともな神経の持ち主なら、豪華ホテルのデラックスなお部屋に泊まって、美味いメシを食べて、それで「チェックインの際に渡されたホワイトバンドを手に、貧困問題について考えよう」という企画に対して「何か間違ってないか ?」と思うハズだ。
そして、これが筋違いの勘違い企画なら、キャンペーン事務局がイチャモンをつけていてもおかしくない。それをしないということは、キャンペーンの趣旨に合った企画として認めているのだと解されるべきだ (ああ、国税の準備書面みたいな言い回し)。つまり、このいかれた便乗商売はキャンペーン事務局の狙い通りということなのだろう。やんぬるかな。
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